◆飽くなき戦い、灰汁(あく)抜く戦い◆
まだ初夏に間のある晴れた日に、山菜片手の野山散策、汗ばむとは言え
いい気分です。
ただ独活(うど)の根本に潜む蝮(まむし)には皆様くれぐれもご用心。
育ち過ぎて役に立たぬものに例えられる“独活の大木” 旬の初々しい時期でさえ
強い灰汁(あく)持つ山菜ですが、一皮剥いたら山烏賊(やまいか)と言われ、
爽やかで味わい深く、先の山菜定食で既にご紹介の一品です。
当店オリジナル山ウド御飯の素材はこちら“剥かれた皮”。
劣悪な地形で冬を生き抜き深みを増したこの灰汁が、二、三ヶ月の桶の中で
すんなり消えるはずも無く、それが夏まで山ウド御飯を皆様にお届け出来ない
理由なのです。
心待ちのお客様の意に添うべき季節向かえて、ここで一気に勝負に出ます。
熱湯張った大鍋に、重曹(じゅうそう)、米糠(こめぬか)打ち振りながら
何度か山ウド潜らせて、頑固な灰汁を微妙な風味に押さえる戦。
天然故のばらつき多く、しかも調理後の適度の食感保つにはそう際限無く
繰り返せぬこの作業。
時に、戦い終えて厨房さん、失意の念が怒りとなってガス台の炎の前で震えおります。
開店間際、「山ウド御飯、本日品切れ」